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紅茶とお菓子について書いているほっこりブログです

ホラーでなく秀作コメディ「人喰猪、公民館襲撃す!」(2009)

2009年公開の韓国のパニック映画「人喰猪、公民館襲撃す!」をキネカ大森に観に行ったんですよ。「夏のホラー秘宝まつり」のスタンプカードがすでに一杯になり、係りの女性から「凄いわね~」と褒められ、もう一人のもぎりの女性からチケットを渡されたんだけど、その女性がなんと片桐はいり。最初は「片桐はいり」に似ているな~ と感じたけど、本人だった。「ひ、ひとくいイノシシ、公民館襲撃す! を一枚ください」と言ったら、片桐はいりがチケットをもぎってくれるんだよ! どんなシチュエーションなんだ、いったい。

前置きが長くなりましたが、2009年公開の映画「人喰猪、公民館襲撃す!」を劇場で観てきました。ちなみに映画が終わったあと、「夏のホラー秘宝まつり」のイベントの一環として、「ホラーしゃべり場トークショー」というのがあり、「人喰猪、公民館襲撃す!」の配給を手がけたキングレコードの山口幸彦氏(ボンクラには「新耳袋殴り込み!」でお馴染みの人だね)と、元シアターN(ボンクラたちにはお馴染みのホラーに強い映画館。現在閉館。ちなみにNは日販のNだ!)渋谷支配人の近藤順也氏のトークショーがありました。

「人喰猪、公民館襲撃す!」(以下「人喰猪」)は、傑作とまでは言えないけれど、面白い映画だった。俺が嫌いな某映画感想サイト(破壊屋じゃないよ)では、人喰猪のことをボロカスに書いていた。そのサイト曰く「俳優達の演技がヒドイ、脚本が素人、キャラクターも魅力が無い、映画のできばえは最悪」など書かれている。このサイトの中の人とは「感性があわないな…… いや相手の感性がゼロか」と常々思っていたが、人喰猪のレビューで改めて思ったね。この人の目は節穴だわ。永遠に「アマルフィ」でも観ていてください。

おっと、グチグチ言ってないでストーリーを紹介。韓国ソウルで警察官として働いている主人公は、ド田舎に転勤を命じられる。身重な妻、認知症の母親をつれて、配属先のサムメリ村に到着。そこにはすぐに怒るが仕事をしないアホな署長、能力はないけど田舎スピリッツあふれる同僚、盗癖のある刑事、主人公が住んでいる隣にはキチガイ女、金にがめつい村長、などなど、自然も豊かだが、変人も豊かな場所だった。
そんな田舎に連続殺人が発生するのだが、犯人は、巨大イノシシだったのだ(ババーン)。
というお話。確かにこれはイノシシが人を襲うパニックホラーなんだけど、本質はコメディ映画。イノシシに食われたバラバラ死体や頭部は韓国映画特有のリアルさ100%や巨大イノシシのCG描写ができがよかったりするけど、ミスターBooシリーズ的なお笑いが連続する作品なのだ。

ミスターBooシリーズにも「笑い」を得るために、直接ストーリーと関係ない描写や演出があるけど「人喰猪」にもふんだんに使われている。だからパニック映画としてこの作品を鑑賞すると「展開が遅い」「人物描写に時間をかけすぎ」「意味の無いシーンが多い」と思っちゃうけど、個人的にはそれは的外れの感想だ。水っぽいビールを飲みながら酩酊して大笑いする映画なのだ。
ただ、予告やポスターを見ると、勘違いしてしまうのもわかる。

確かにこの予告見るとパニックホラーだと思うよね。でも、タイトルが「人喰猪、公民館襲撃す!」だぜ(笑)。
「人喰猪」の魅力は登場人物。出てくる人たちが主人公以外、基本的にみなさん頭のねじが飛んでいる人ばかり。その変人たちがまたイイ味を出している。ちなみに、人喰イノシシが公民館を襲撃するのは、メインじゃありません(笑)。

映画が終わった後のトークショーを聞いていると、この映画のタイトルをつけた山口氏がいうには、「帰ってきたウルトラマン」の「二大怪獣東京を襲撃」というサブタイトルにインスパイアされたとか。シアターNでこの映画を公開する前に、近藤氏が山口氏に対して「この映画はどんな内容なんですか?」と尋ねたときに「人喰イノシシが公民館を襲う映画です」と答えて、そのままタイトルになったとか。
私の嫌いな某映画批評サイトは「ツマラナイ映画なので、配給会社の社員が苦肉の策で考え出したタイトルでは?」と推測していましたが大外れです。
某映画サイトは配給した社員もツマラナイ映画なので頭を抱えたのでは? と書いていたけど当の山口氏は「この映画大好き」とこの映画のTシャツを着て(私も買ったけど)愛情たっぷりに語っていました。
しかしこの映画、公開時当時はまったく客が入らず、打ち上げ時に山口氏は怒りが爆発したとか(笑)。映画の原題は「CHAW」。これは「飲み込まずに噛む」という意味なんだけど、よくここから、「人喰猪、公民館襲撃す!」というネーミングをつけたな~ 素晴らしい。

監督はシン・ジョンウォンという人なんだけど、次の作品の邦題は「漁村の幽霊 パクさん、出張す」(原題は「占い師たち」)。このネーミングも山口氏が命名したのかと思いきや、まったく関係ないらしい。山口氏は「さっき配給会社の人に聞いて知りました。今度見てみます。ただ、売れてない&知られていない作品からパクってもな~(笑)」と答えていた。

確かにB級テイストの映画なんだけど、カット割りや演出、細かい社会風刺も入っていて「安いタイ料理屋に入ったけど、もやしの髭は全部とられていて丁寧な仕事をしている美味しい料理が出された」的な作品でした。だからこれをB級か? と聞かれたら即答できない。
ちなみに近藤氏に「いちばん好きなホラー映画は何ですか?」と尋ねたら「いけにえ」(=悪魔のいけにえ=テキサス・チェーンソー・マサカー)と即答していた。やっぱりテキサス・チェーンソーは人気だな~

週末に大笑いしたい人にはお勧め。


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