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紅茶とお菓子について書いているほっこりブログです

山手線内の作家親父

昨日、山手線で新宿方面に移動をしていた。帰宅のラッシュアワーのため車内は満員。夏の熱気や汗などで、電車の中でいるだけでヒットポイントがどんどん減っていきそうな状態だった。
私は席に座ることができず、つり革を握って立っていた。
ネオンが輝く外の景色から、真正面に座っている人をふと見る。白髪が混じった角刈りの男性が座っていた。彼は必死に何かの作業をしていた。
使い古された栃木県の大きな住宅地図書籍をひざの上に置き、それを机代わりにして、A4のキャンパス青ノートに、1行・1文字のスペースもあけることなく、鉛筆でびっちりと文字を書き込んでいる。
いやらしく、書いている内容を見てみようとする。
お世辞にもきれいとはいえず、小学3年生ぐらいの男子が書いた、漢字練習帳に書かれたような文字だった。しかもシャープペンシルでなく、先が丸くなった鉛筆で書かれ、色も薄い。そんな視認性が悪い文字を180度反対の方向から立って見たので、どのような事が書いてあるか読み取れない。
あまりにも男性が一生懸命書いているので、最初は「業務日報かな?」と思っていたが、時折「!!」「〜助けて!!」といった、仕事ではあまり使用しない文字やフレーズが見えたので、この文章は完全に男のプライベートの産物なのだろう。
ページのノンブルは鉛筆で56、57と振られていた。
男の書くスピードは常に一定だ。「考える」→「書く」という2拍子でなく、機関銃のようなリズムで、A4のキャンパスノートを文字で埋めていく。
1行・1文字のスペースもあけることなく。
「自作のエロ小説でも書いているのかな?」
男の気迫にあふれる、執筆活動をみているとそんな気がしてきた。そう、エロは男のファンタジー。物語のなかでは、憧れのアイドルや女優、知人や友人がすぐに恋人になってくれ、お金と時間をかけなくても服を脱いでくれる。
電車は新宿に着き、男はあわてて降りる準備をはじめた。ノートをたたむと表紙が一瞬見え、太いマジックで次のように書かれていた。「面白い話 No23」。
彼リュックからぼろぼろになったチラシを取り出し、2つ折にし、大事そうにそのノートを挟んでリュックにしまい、降りていった。