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紅茶とお菓子について書いているほっこりブログです

『攻殻機動隊』と『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』と『ゴースト・イン・ザ・シェル』のオレの因縁

ハリウッド版「攻殻機動隊」こと、スカーレット・ヨハンソン主演の「ゴースト・イン・ザ・シェル」を鑑賞してきた。

最初に述べておくと、私は士郎正宗の漫画版『攻殻機動隊』(1991年)ファンである。漫画版『攻殻機動隊』を知ったのは、当時西日本新聞で米澤嘉博の「お勧め漫画」の連載だ。「攻殻機動隊」は発売されたばかりで、彼はそれを褒めていた。当時は、米澤嘉博がいったい何者なのかよ知らなかったのだが、そこまで面白いのなら・・・・・・と思い、近所の本屋に行くも置いておらず。何軒か探し回り、やっと見つけた。

攻殻機動隊(1) (ヤングマガジンコミックス)

攻殻機動隊(1) (ヤングマガジンコミックス)

『攻殻機動隊』を読んだときの衝撃は未だに憶えている。まず、設定が複雑すぎて一読では意味が分からず、なんどもなんども欄外の書き込みを含めて繰り返し読んだ。車での人の殺し方、デジタルデータのコピー概念、そして何よりも、社会と人間がネットワークで繋がった世界が斬新だった。インターネットがこれだけ日常になってしまった今となっては、珍しくないが、パソコン通信の時代でネット黎明期。人間と社会がこれだけネットワークに繋がるなんて想像できなかった。技術の進歩は人間の想像を超える。

ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』(1984年)とか読んでサイバーパンクの「サ」の字を知っていれば、ここまでビックリしなかったんだろうけど、当時は知らなかったので、その驚きは大きかった。

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

友人に『攻殻機動隊』を勧めまくったが、まわりの反応は良くなかった。つまらない、難しい、面白くない・・・・・・と否定的な語尾の「い」が沢山帰ってきた。これだけ面白い作品が理解できないなんて、と哀しくもあったが、『攻殻機動隊』の絶対的な面白さは変わらない。それから、士郎正宗の作品を読みあさった『ブラックマジック』(1985年)、『アップルシード』(1985年〜1989年)、『ドミニオン』(1986年)、『仙術超攻殻 ORION』(1991年)・・・・・・。いろいろ読んだけれど、やっぱり『攻殻機動隊』がいちばんだった。

4年後の1995年、『攻殻機動隊』が映画になると聞いて、驚きながら喜んだ。あの少佐の活躍が動画で見られる。映画が公開されてすぐに、福岡中州にある映画館『中洲大洋映画劇場』で一人で観に行った。この劇場は個人的にいわつきで、中島みゆきのコンサート『夜会』のチケットを手に入れるも、日時を間違えて中州に着いたときは前日に終わっていたこと知り、絶望しつつも映画でも見たれや・・・・・・とやさぐれた気持ちでたまたま観た映画が『レオン』だった。という思いでの場所だ。

期待を大きくして映画を鑑賞すると、たいていはガッカリする。そんな法則を当時はわかっていなかったし、たとえ知っていてもあれだけ大好きな漫画のアニメ化なのだろうか、希望はどんどん大きくなってきただろう。

『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』鑑賞後、私のおでこには「期待外れ」と書かれていた。滅多に買わないパンフレットを購入し、トボトボ歩きながら天神に向かった。そして、押井守が嫌いになった。それから数多くの映画を鑑賞してきたが、この映画の時ほどガッカリした感覚は味わっていない。いや、正確に述べるなら、『もののけ姫』(1997年)を劇場で観た後も、期待を打ち砕かれたが、後で見直すと良い作品だ。だが、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』は何度観ても好きになれない。そう、私は『攻殻機動隊』の原作原理主義者なのだ。

さて、前置きが長くなったが、『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017年)を鑑賞した。この映画は、押井守の映画がベースになっていると聞いたので、期待はゼロどころかマイナスからのスタートだ。そして、あのガッカリから22年も経っており、原作原理主義者のガッツも減ってきた。つまり、1995年のときよりも冷静に映画を鑑賞することができる体になった。

この映画が面白いか? と尋ねれたら、面白くもツマラナくもない、平々凡々の作品だった。

この作品、細かい突っ込みどころが多すぎだ。
スカーレット・ヨハンソンの銃の構え方が素人っぽかったり、少佐のアイデンティティを探す目的と結果が安っぽかったり、そもそもなぜ少佐が9課にいるのか詳しく説明してなかったり、社長がそもそもでてくるかとか、なぜ9課に義体を提供するのか? なぜスカーレット・ヨハンソンの顔になったのか、ビートたけしのセリフが日本語だけど滑舌が悪いので聞き取りづらく英語の字幕を読んだり・・・・・・と、突っ込みデパートとなっている。
それらを感じさせないストーリーだったり、映画の雰囲気が作られていたら気にならないのだが、この作品にそこまでの魅力はなかった。

結局のところ「世界観の作り込み」が甘すぎ、そして陳腐なストーリー展開となっているので、出来の悪いSFムービーとなっている。恐怖を体験したくて、お化け屋敷にいったら、安っぽい飾りにやる気のない幽霊がいてガッカリした・・・・・・といった感じだ。

1982年に製作された『ブレードランナー』の方が圧倒的に「未来感」が出ていて良い。35年前のSF作品に負けてどーなっとるねん、と想うが『ブレードランナー』は超絶名作なので、これと比較するのは『ゴースト・イン・ザ・シェル』がカワイソウか。

最初から期待せずに観に行ったが、想像通りの作品だった。
良かったのはエンドロール。このエンドロールが良く思えるのは、それは懐かしさとジャパニメーションに対する本作の敬意であって、やっぱり『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』は認めない。

この映画を観た後、青山ブックセンターで行われた「吉田戦車と江口寿史のトークショー」を見に行った。ショー終了後、漫画の『攻殻機動隊』を26年ぶりに買い直した。帰宅後さっそく読んだが、やっぱり面白かった。