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紅茶とお菓子について書いているほっこりブログです

テハンノの圭子は夜ひらく夢

某月某日晴れのち雨
夜の十時を過ぎるとソウル駅周辺も閑散としてくる。お腹が空いたので何か食べたいが、駅中のお店はシャッターが閉まり、営業しているファーストフードも2店ほどあるが、どちらもほぼ満席で入る気がしない。改札から出てくる人間も少なくなり、近代的な駅舎から無機質のオーラがだんだん強くなってくる。

ソウルは十年ぶりで2度目。ほとんど土地勘がないので、どこに行って良いのかわからない。知っているところと言えば大学路(テハンノ)ぐらいだ。

ソウルに着いた当日も夜が遅かった。ホテルにチェックインし、フロントの人に「いまからで食事ができるところはどこか?」と尋ねて教えてくれたのが、テハンノだった。ホテルから歩いて約10分。そのときは、地名など全く知らず、まさかここが韓国カルト映画で有名な「テハンノで売春していてバラバラ殺人にあった女子高生、まだテハンノにいる」のテハンノだと知ったのは、ホテルに戻ってからだった。
テハンノは演劇が活発な若者の街。深夜零時を回っているにもかかわらず、若い男女がウロウロしている。適当に見つけたダッカルビ屋に入る。店内は中年の男女の客が1組だけ。彼らは焼酎の瓶をたくさんあけて、なぜかふたりで店内を出たり入ったりしている。スタッフはたったふたり。フロワーにはてきぱき働くアラレちゃんみたいな若い女性、調理場には漫☆画太郎が描くような老婆がいた。ダッカルビは美味しかったが、おかわりし放題のキムチは普通だった。

深夜のためか、店内はガラガラ

ダッカルビ

初日訪れたテハンノの雰囲気がよかったのと、深夜まで営業している飲食店が多かったので、タクシーを使ってソウル駅からテハンノを目指す。
正直タクシーには乗りたくなかった。この旅行はスケルトンツアーで、ホテル手配と空港の送迎だけが付いているもの。仁川空港からソウル市内に向かう送迎バスの中で、案内の人が「タクシーのぼったくりに気をつけろ」と口を酸っぱくアドバイスしてくれ、ガイドブックを見ると「タクシーのぼったくりに気をつけろ」としつこく書かれてあった。
インドのアーグラで三輪タクシーにぼられた記憶が蘇り、重い気持ちで乗り場に向かう。タクシー乗り場の案内人は非常に丁寧な男性で、「テハンノテハンノ」と伝えたら、タクシーのドアを開けて、ドライバーに行く先を伝えてくれる。
運転手は50代ほどの男性で無口。タクシーは出発し、テハンノに向かう。タイミングがいいのか悪いのか雨が降ってきて、窓ガラスが水滴でどんどん濡れていき、ネオンの光がぼやけていく。

薄暗い車内でガイドブックの地図を見ながら、遠回りしていないか確認する。ショッピングで有名な明洞を通過し、どうやら最短ルートで走っているようだった。運転手は黙ったままで、車内にはラジオが静かに流れている。
いまかかかっている韓国語の曲はどこかで聴いたことがあるが、思い出せない。しばらく考えて、わかった。これは藤圭子の「圭子の夢は夜ひらく」だ。
恐らく運転手がぼったくりでないことと、この曲を聴いたことで、ちょっとだけ安心する。15分ほどでテハンノに到着。
車内で「このひとぼったくりかな〜 そうじゃないかな〜」と日本語でブツブツ言っていたのだが、どうやらドライバーのおっさんは日本語ある程度わかっていた模様。だったら、一言いってくれ。

その後、テハンノの海鮮屋に入るも店員さんは日本語も英語も全く通じず、Google先生を通じてオーダーをしたり、バケツいっぱいの貝が出てきて驚く話はまた次回。